クーリングオフの期限の数え方 — 8日目が日曜日でも延びない?

「契約から8日以内」とよく言われるクーリングオフ。この8日間は、いつから数えて、いつまでなのでしょうか。期限日が休日だった場合の扱いも含めて、数え方を正確に押さえておきましょう。

起算日は「書面を受け取った日」、そして初日算入

クーリングオフの期間は、契約した日ではなく、契約内容を記載した法定書面(または電磁的記録)を受け取った日から始まります。そしてこの期間は、法律の原則(初日不算入)の例外で、受領日そのものを1日目として数えます。特定商取引法の条文は「受領した日から起算して8日を経過した場合」には解除できない、という書き方になっており、「受領した日から起算」という一言が初日算入を意味しています。

書面受領日から数えると… 初日を含める(起点=1日目) 1 書面受領日 2 3 4 5 6 7 8 8日目 9
書面を受け取った日が1日目。8日目(受領日+7日)が期限日で、この日までに通知を発信すればよい。

たとえば7月1日(水)に訪問販売で契約し、その場で書面を受け取った場合、1日目が7月1日、8日目は7月8日(水)。7月8日までに通知を発信すればクーリングオフできます。「受領日+8日」と勘違いすると1日遅れてしまうので注意してください(正しくは受領日+7日が期限日です)。

なぜ契約日ではなく書面の受領日なのでしょうか。クーリングオフは「冷静に考え直す期間」を保証する制度なので、考え直すための材料である契約内容の書面が手元にあることが前提だからです。訪問販売では契約と同時に書面を渡されることが多いので契約日=受領日になりますが、電話勧誘販売では契約後に書面が郵送されてくるため、契約日より数日遅れて期間が始まることになります。封筒の消印や配達記録は、起算日を証明する材料になるので保管しておきましょう。

なお、書面の記載に不備がある場合や、そもそも書面を受け取っていない場合は、期間は進行しません。8日を過ぎていてもあきらめる前に消費生活センター(電話番号188)に相談を。

期限日が休日でも延びない — 代わりに「発信主義」

一般の法律上の期間は、期限日が土日祝にあたると翌開庁日まで延びることがあります(民法142条)。しかしクーリングオフの期間は休日でも延長されません。8日目が日曜日なら、その日曜日が期限です。民法142条は「その日に取引をしない慣習がある場合」に限って末日を延ばす規定であり、はがきの投函やメールの送信は休日でもできるので、延ばす理由がないと考えられているためです。

その代わり、クーリングオフの通知は期間内に「発信」すれば有効です(発信主義)。相手に届くのは期限を過ぎてからでも構いません。はがきなら期限日の消印が付けばよいので、8日目が日曜日でも、郵便ポストに投函すれば間に合います。2022年6月からは、メールや事業者のウェブフォームなど電磁的記録による通知も認められています。

期限日の計算例 — 曜日別に見る

書面受領日(1日目)8日目(期限日)注意点
7月1日(水)7月8日(水)平日どうし。特に迷わない
7月4日(土)7月11日(土)受領日と同じ曜日が期限日。土曜日でも延びない
8月7日(金)8月14日(金)お盆期間でも延びない。事業者が休みでも発信はできる
12月26日(土)1月2日(土)年末年始をまたぐ。郵便局の窓口は休みでもポスト投函は可能
4月25日(土)・連鎖販売取引(20日間)5月14日(木)受領日+19日。ゴールデンウィークをまたいでも延びない

表からわかるように、8日間の期限日は受領日と同じ曜日になります。水曜日に受け取ったなら翌週の水曜日、土曜日なら翌週の土曜日が期限です。この「同じ曜日」という覚え方は、カレンダーを見なくても期限日を把握できるので便利です。20日間の取引では、受領日+19日なので受領日の曜日から2日戻った曜日(土曜日受領なら木曜日)になります。

取引ごとの期間 — 8日間と20日間

期間は取引の種類で決まり、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供(エステや塾など)・訪問購入が8日間、連鎖販売取引(マルチ商法)と業務提供誘引販売取引(内職・モニター商法)が20日間です。取引の種類ごとの具体例を含む一覧表と、受領日を入れるだけの期限日計算はクーリングオフ期限計算ツールに置いています。

連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引が20日間と長いのは、「自分も販売員になって収入を得る」というビジネスの側面を持ち、契約内容が複雑で判断に時間がかかるためです。

クーリングオフできない主な取引

  • 通信販売(ネット通販・カタログ通販)— 自分の意思で申し込む取引とされ、制度の対象外。返品できるかは各ショップの返品特約によります
  • 自分で店舗に出向いた買い物 — 不意打ち的な勧誘ではないため原則対象外。ただし、路上で呼び止められて店舗に連れて行かれた場合(キャッチセールス)や、「当選しました」と呼び出されて契約した場合(アポイントメントセールス)は、店舗での契約でも訪問販売として扱われます
  • 3,000円未満の現金取引 — 訪問販売等でも、その場で現金一括払いした少額取引は対象外
  • 使ってしまった消耗品 — 健康食品・化粧品などの政令指定消耗品は、開封・使用すると使った分は対象外(未使用分は対象)
  • 自動車 — 交渉に時間をかけて購入するのが通常のため適用除外

通知するときの実務ポイント

  1. 契約書面に書かれている事業者名・住所・契約日・商品名・金額を確認し、クーリングオフの案内欄(赤枠で記載されていることが多い)を読む。
  2. はがきに「契約を解除します」という趣旨と、契約日・商品名・金額・自分の氏名住所を書く。理由を書く必要はない。
  3. はがきの両面のコピーを取り、特定記録郵便や簡易書留で送る。発信日の証明が残る方法を選ぶ。
  4. クレジット契約を組んでいる場合は、販売会社だけでなくクレジット会社にも同時に通知する。
  5. コピー・受領証・封筒などの証拠を、返金が完了するまで保管する。

はがきに書く内容

決まった様式はありませんが、次の項目を書けば十分です。消費者庁の「特定商取引法ガイド」にも記載例があります。

  1. 表題として「通知書」または「契約解除通知書」と書く
  2. 契約年月日、商品名(サービス名)、契約金額、販売会社名・担当者名
  3. 「上記の契約を解除します」という一文
  4. 支払済み代金があればその返金を求める旨、商品を受け取っていれば引き取りを求める旨
  5. 通知を書いた日付、自分の住所・氏名

宛先は契約書面に記載された事業者の本社(または書面上の連絡先)です。営業担当者の個人宛てだと届かないおそれがあります。書き方に迷ったら、消費生活センター(188)に電話すればひな形を教えてもらえます。メールで通知する場合は、送信メールを削除せずに残し、可能ならフォームの送信完了画面も保存しておきます。「期限日ぎりぎりに送ったが、事業者側で受信の記録がない」と言われるトラブルを避けるため、期限に余裕がある段階で送ってしまうのが一番の安全策です。

クーリングオフの効果 — 完全な白紙撤回

クーリングオフが成立すると、契約ははじめからなかったことになります。具体的には次のとおりです。

  • 違約金・キャンセル料・損害賠償は一切請求されません
  • 支払済みの代金は全額返金されます
  • 受け取った商品の引き取り費用は事業者の負担です
  • 屋根工事などがすでに行われていても、無償で元に戻すよう請求できます

期限を過ぎてしまったときは

8日目を1日過ぎてしまったからといって、必ずしも手遅れとは限りません。まず確認したいのは書面の不備です。法定書面には、商品名・金額・支払方法・事業者の連絡先・クーリングオフの説明などの記載事項が定められていて、これらが欠けている書面は「法定書面を受け取った」ことになりません。書面に不備があれば期間はまだ始まっていないと解されており、8日を過ぎていてもクーリングオフできる可能性があります。「不備」の典型は、クーリングオフができる旨の記載が無い、事業者の住所や電話番号が抜けている、商品名や金額が空欄のまま、といったものです。

事業者が「クーリングオフはできない」と嘘を言って妨害した場合や、「解約すると損害賠償を請求する」などと威圧して困惑させた場合も同様に、期間は進行しません。この場合は、改めてクーリングオフができる旨を記載した書面を受け取ってから期間が起算し直されると解されています。

期間を過ぎていても、契約内容によっては中途解約や、不実の説明があった場合の取消しなど別の手段があります。契約書面を手元に用意して188に電話すれば、最寄りの消費生活センターにつながります。

よくある質問

契約した日と書面を受け取った日が違うときは、どちらから数えますか?

法定書面を受け取った日から数えます。電話勧誘販売のように契約から数日後に書面が郵送されてくる取引では、契約日ではなく書面が手元に届いた日が1日目です。届いた日がわかる封筒や配達記録は捨てずに残しておくと安心です。

8日目が日曜日でした。月曜日に出しても間に合いますか?

一般には延びないと考えられています。クーリングオフの期間は末日が休日でも延長されないと解されているため、日曜日が8日目ならその日までに発信する必要があります。はがきは日曜日でもポストに投函すれば消印が付きますし、メールやウェブフォームなら送信日時が記録に残ります。

通知はメールでもよいのですか?

2022年6月以降は、メールや事業者が用意したウェブフォームなど電磁的記録による通知も認められています。ただし送った証拠が残るように、送信メールの保存やフォーム送信画面のスクリーンショットを取っておいてください。確実さを重視するなら、はがきの特定記録郵便と併用する方法もあります。

ネット通販で買ったものはクーリングオフできますか?

できません。通信販売は自分の意思で申し込む取引とされ、特定商取引法のクーリングオフの対象外です。返品できるかどうかは、そのショップの返品特約の記載によります。返品特約の表示がない場合は、商品到着から8日以内であれば送料自己負担で返品できるという法定返品権のしくみがあります。

参考資料・出典

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